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決意 6

Author: 煉彩
last update Last Updated: 2025-10-20 21:14:41

「直接、彼女に聞いてみる」

 孝介はスマホを取り出し、美和さんに電話をかけた。

「もしもし?すみません。急に。あの、今日作ってくれたミネストローネなんだけど、ちょっと味がおかしくてさ?美和さんが作る料理はいつも美味しいから。どうしたのかなって思って」

 言い方がかなりやんわりしてる。

 この味付け、····どころではないのに。

「えっ。そんなことがあったんですか?···。美月にはキツく言っておくから。うん。わかった。また明日、よろしくお願いします」

 美月にはキツくってどういうこと?

 私、何もしてない!

 彼は「はぁ」と溜め息をついた後

「お前、美和さんの作った料理にケチをつけたらしいな?」

 そう言って、キッチンテーブルを叩いた。

「えっ?」

 ケチをつけたって。私、そんな言い方してない。

「ケチはつけてないよ。美和さんに、味付けをアドバイスしてほしいって言われて。コクを出すなら少し味噌を足した方が良いって言っただけ……」

「それが余計なお世話なんだよ!調子に乗るな!!美和さんが··にそれを受け取ったから、こんな味になったんだろうが!」

 室内に響く、怒号。

 いや、少しでこんな味にはならない。

 もしかして美和さんはわざとこんなことを?

 孝介は美和さんを信じている。私の言葉なんて伝わらない。

 私が黙っていると

「非常に不愉快だ。お前、罰としてこれ全部飲め」

 眼が、本気だ。

「嫌よ」

 私なりに精一杯反抗する。

「食材を無駄にしやがって!誰が金を稼いでると思ってるんだ!」

 孝介は私に近寄り、平手で頬を殴ろうとした。

「やめて!」

 私は咄嗟に自分の腕を使い、防ぐ。

「チッ」

 孝介は舌打ちをし

「二度と美和さんの料理に口を出すな」

 そう言って、自室に入って行った。

 急に肩の力が抜ける。

 座り込みそうになったが、なんとか耐えた。

 美和さんのこと、そんなに大切なんだね。

 孝介が私と一緒に居る意味などない。

 腕が痛い。顔だったらもっと痛かったかな。

 私はテーブルに残った食事を片づける。

 美和さんと会った時、私はどんな風に接すれば良いんだろう。

 次の日、孝介は言葉を発することなく、仕事に行った。

 朝から怒鳴られるかと思ったけど、昨日のことについては、何も言われなかった。

 私もあと一時間ほどでベガに出勤予定。
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